« 2004年12月 | メイン | 2005年05月 »
今回は、企画開発に関与してから、聞いたり学んだりしたこと、はたまた自己流に解釈したりしたこと等を書いてみます。
最近ちょっとマイブーム?なのは、複雑な企画開発の仕事の解釈を比ゆ的に言葉にしてみて、自分自身これは良いかも知れない・・・自分でも段取り用などに使えるかもしれないと勝手に悦にいっている開発の説明があります。
企画開発の仕事を魚釣りにたとえてみたら、これがハマったのです。小生の企画開発の「釣り」では、
・池を探す
・魚を研究する
・ライバルの釣り師を研究する
・とても釣れそうな独自の釣り方を考える
・それでライバル釣り師に勝てるか?
・勝ち続けられるか?・・・こんな考え方をしています。
ご説明いたしますと、まず
池を探す・・・のは市場の事です。
できれば、その池は人知れず存在する魚影の濃い池が良いです。(*1)
しかし、なかなか、そう言う手付かずの山奥の池のような自然は、見つけるのが難しいです。 しかし、やはり、これが目指すべき最良の池ですね。
(*1)人知れず存在する魚影の濃い池
そして、その池にいる魚が多いか少ないか等を調べます。これは マーケットリサーチ でしょうか。手付かずの池でも魚がいなければ事業的にはダメですから・・・。
さらに、その池の魚の生態を研究把握します。(*2)
深夜は深いところで寝ていて動いていないとか、朝方は浅瀬で泳いでいるとか、人陰には敏感ですぐ逃げる・隠れるとかで、昼間は良く餌を食うとか?何かの匂いが好きだとか・・。これは、ターゲットの研究です。言い換えたら ニーズのサーベイ でもあるのでしょうか。 これは相当に重要です。
池探しから魚の研究までが混然としている場合もあると思います。新しいニーズの仮説など、新市場ほどそうだと思いますが、池も魚も新発見なんて事もあると思います。
(*2)魚を研究して独創的な釣り方を考える
で、この池の回りに釣り師はいるか?大勢か数人か?彼らはどんな釣り方をしているか?ライバル研究です。
通常はどの池にも、他の釣り師が先に釣りをしている事が多いので、彼ら先行する釣り師の研究が必要です。ライバルのベンチマーク でしょうか。比較表など作ります。
で、自分の独自性のある釣り方を考えます。
(*2)ここは勝負です。アイデア です。他の先行する釣り師とは違う釣り方で、他の釣り師より釣れそうな釣り方、新しい魅力的な、画期的な釣り方(アイデア)を目指して考えます。
これはアイデアであり、商品企画です。ここで考案した釣り方は、論理的にも、確かに釣れそうだと思えるものでないといけません。後はこの、考えた釣り方が、その後どのくらいの期間、通用するか?・・・なのです。
冷静に見て、ほかの釣り師より多く釣れそうで、長く通用する釣り方、すぐに真似をされない釣り方・・・が目指すところです。(特許などで権利化できたらそれが最良ですね。)
この長く通用するかどうかは、商品企画の検証や事業性の調査とも言えるかもしれません。
で、受容性も高く、事業になりそうで、続きそうな企画だ・・・となれば、いよいよ製品化を目指して動く・・・つまり設計・生産となっていく・・・と言う話です。
自分もそうでしたから笑えないのですが、よくある話は、開発に従事したばかりの頃は大抵、この、池の話をすることが企画開発だと思ってしまうのです。
こう言うユーザーの、こう言う心理に向けた商品・・・とか企画書に書いてあり、それが具体的には何なのかが書いていない企画書を良く見ます。
つまり魚の研究までは少々あるのですが釣り方・・・アイデア(企画)自体が書いていないのです。
魚の生態からして、釣り師が姿を見せずに電動リールで針をいっぱい付けて、離れた場所から投げて、そっと引いたら釣れるとか、いっそ針をやめて、池のあっちとこっちで電極に電流を流し痺れさせて一網打尽にするとか・・・そういう釣り方が知りたいのです。独自の釣り方を考えたら前述のように実案や特許を出したいですね。真似をされにくいですから・・・。
ここからは実際の実務についてですが、現実の「物」の開発では、池探しや、魚の研究は日常的な問題意識でやっているような気がします。ライバルの釣り師の研究も、これと同様に、普段から何となく大まかに掴んでおく感じだと思います。
そして、核となる開発の行為は、やはりアイデアが出るかどうかと言うことだと思います。
もっと極端に言うと、アイデアが先に出て、後からそれが勝てるかどうか考える・・くらいが真実と言う気さえします。 もっとも、正攻法でやる場合もあります。
例えば今やっているコンテンツサービスの改善・リニューアル等の時です。こう言う場合、もう池は決まっています。ライバル釣り師の分析も詳細に成されているでしょう。だからこそ、こう言う場合は魚の分析が勝負です。魚の深層心理にまで近づくような仮説を発見しないと、勝てそうな・・・他社との違いができてきません。このように、実際の開発では、池の開発の話の通りの順番で物を考える訳ではないですが、やはり原則と言えば言えるのが、この「池の釣り」だと思います。
色々なテーマで開発に関与すると、こう言う応用する経験のポケットが増えてくるのだと思います。
先日はカタカナ語の話で、自分も含めた日本のビジネスマンのアメリカ志向?をちょっと笑ったりしましたが・・・。
真面目な視点で見ますと、小生は「実は日本の経営って結構素晴らしくて、もっと自信と誇りを持つべきじゃないか」と言うことも考えていたりします。
確かに便利な言葉として、経営には米国流のカタカナ語が蔓延しているのは事実だと思いますが・・・。
良く耳にする言葉も本当にカタカナ語が多いです。(リアルまたはイメージ)ターゲット、プロモーション、アドバタイズィング、パブリシティー、オファー、プロポーザル、MOU、LOI、コンフィデンシャル、NDA、WIN―WIN、R&D、リサーチ、マーケティング、ROA、ROI、PER、WEB、IT、NET、INVOICE、サーバー、サイト、などなど、・・・いくらでもありますね。
商品コンセプト、開発コンセプト、コミュニケーション・コンセプト、などの開発系の言葉は自分なりに勉強したり深堀りしたりしているので、ある程度「意味」は押さえているつもりですし、カタカナ語ではあっても自分なりに精神・背骨の入った喋りに使えているのでは・・・と思います。
しかし、それにしても日本のITや企画開発の用語、ビジネスの用語は本当にアメリカ語が多いなあ・・・と感じます。
また、例えばMOUとLOIのように(メモ・オブ・アンダスタンディングとレター・オブ・インテントなんですが、直訳は「理解したよメモ」と「意志(決意)の手紙」です)使ってはいても、その内容の詳細な違いなんて未だに良くわからないものもあるのです。恥ずかしながら法的効力の差も全く良くわかりませんし・・・。
ただ感じるのは素朴な疑問です。最近の日本のビジネス社会はどうしてこんなにアメリカを見てしまったのかなーと言うことです。
コンピュータの世界やITなどがそうですが、アメリカで主要なイノベーションが行われ発展した物は、アメリカの言葉で表現しやすいのは当然だ・・とわかります。しかし、経営理念などの話はこれらとは別で、日本の伝統も十分凄い!と思うのです。
日本が誇りを取り戻したい
アメリカの一流大学でMBA(経営学修士)を取得したりするのはかなり難しいそうですし、大変な価値だと思います。 また、仕事でも実際かなり有効に使えるだろうなと素直に感じ尊敬もします。しかしそれでも、それは仕事の理念理想や志とは異なる「知識や道具の話」なのではないか?とも思うのです。
また貿易の現場のように国際的な取引現場での現実を考えますと、英語は言語的にスタンダードだし取引用語の英語は使わざるを得ないと思います。しかし、アメリカの事業や商売の理念までもが完全に正しい・・・とは思わないのです。
日本的経営も優れているはず
会計基準もSEC基準でした?か、米国基準がグローバルスタンダードだと聞きますが、やれ4半期の開示だ、株主利益の尊重だ、社外監査役の採用だ、社外取締役だと言ってけん制の仕組みの優秀性を唱えていたと思います。
確かに仕組みとして旧来の日本のシステムより客観性・けん制の効果・信頼性が高いかな・・・とは思います。が、それでも、大きな不正を働く企業はアメリカにも多数あった筈です。
例えば、エンロン社などは工場も持たずに、何でもネットで売ると言って、余剰電力の取引までをしていたと思いますが、「完全にはじけて訴訟だらけ?」になってしまいました。
小生もさすがにこのビジネスモデルを聞いた時は、始めから「そんなのありか?」と言うような商売だと思っていました。 「そりゃ嘘だろ?」と感じていました。
結局、経営の重要な部分は、ポリシー、マインド等であってシステムでは完全には保証できないと思うのです。
「システムは経営の補完・手伝いはできても経営の主役ではない」と言いますか、企業は結局、人だと思いますし、理想や夢といった理念的な事が、相当重要だと思うのです。
そこで、その理念的なことで言えば、最近の株主重視を真っ先に掲げる姿勢などに非常に違和感を感じます。やはり顧客重視、事業重視であるべきと思うのです。
事業がうまく行って、結果として株主の利益だと思うのです。ちょっと順番が違うだけのようで、実は仕事の仕方が本質的に違うのがこの順番だと思います。
聞きかじりなので確かな知識ではないのですが、ヨーロッパでは名門企業などは(確かネスレの話)短期の業績を開示しないとも聞きます。つまり短期業績の重視に走ると企業の舵取りが近視眼的になり、長い目で見て経営的にはマイナスであること。そこで、そう言う視点を理解し、会社を長期的視点で信頼し株式を保有してくれる方に株主になって欲しいと言い切る・・・。
この話は本当かどうか知れませんが、素晴らしくうらやましいなあ・・文化だな・・と思ったものです。
ひるがえって、私たちはもっと日本の商売・・・伝統のある日本の商売の精神的なバックボーン・・・・職人さんの仕事への誇りだったり、商いは飽きずにやりなさい、とか、利は元にありと言う教えだったり、・・・そう言うことに、もっと自信と誇りを持つべきだと思っています・・・。
もし小生が海外との取引で、有利な立場で、売り手の時、一度くらいジャパニーズスタンダードで、日本語で、日本の様式でしか契約しない・・・・などと、ふざけたことを言ってみたいと思います・・・(笑)。
ちなみに最近日本でも流行のWIN―WINなどと言う話を持ってくる相手は、小生の今までの少ない経験で恐縮ながら、大抵自分の会社の事しか考えていませんでした・・・・。
また、別の視点では、やはり製造業の尊さ・・・。工場の凄さ、素晴らしさ・・・を最近強く感じます。
仕事で電機メーカーさんを始めとする色々なメーカーさんの工場に伺う機会もあるのですが、こんなに大きな土地に工場を作り、人を育て、開発をし、「ものづくり」をされているのは本当に凄いことだ・・・としみじみと感じるのです。
そしてそのような素晴らしい会社さんの時価総額がIT系企業と比較して低いのでは・・・と絶句したりもします。やはり不自然で異様な株価を感じたりもするのです。
論点がバラバラになって恐縮ですが、やはりシステムや言葉 は便利で先進的なアメリカに学んでも、商売・ものづくりの魂は「日本」で良いのではないでしょうか・・・。
商売は担い手の心そのもの・・・のように感じるのです。自分の軸足が比較的IT的で、かつ、吹かなくても飛んでしまうくらいの零細企業なのに、こんな知った風なことを言ってお恥ずかしい限りですが、最近このような事を考えたりしております。