「夢の携帯電話用ゲーム」
時は2003年の年末。
ビー・ナチュラルと言う会社を立ち上げたばかりの時でした。
会社を作った動機のひとつが携帯電話のゲームサイトをやりたい!・・でした。
これを「なんとしてもやりたい!!」と強く考えていました。
もともと携帯電話の有料コンテンツ事業は小生のかつての本業の一つでした。
ところが、独立してみると分かったのですが、小さな会社、お金の無い会社・個人・・のレベルで考えますと、携帯電話のゲームサイトは大きな投資が掛かる難しい仕事でした。
すぐにはそう言う開発資金がありませんでした。
お金もなかなか貸してもらえない・・・。
携帯電話のコンテンツ開発のコンサルティングや「カバンの中身」で少しづつ売り上げをあげて、会社に体力をつけつつ、資金繰りを解決しませんと、思いがいくらあっても簡単には着手できない仕事でした。
お金も人も必要なのです。
夢だけ?はありました。
企画だけ?は腹案がありました。
1.携帯オリジナルのゲーム。
2・チョイゲーといわれる説明やマニュアルが不要な簡単ミニゲーム。
3.電車の中などの短時間で決着する。たかが暇つぶし、されど暇つぶし。
4.ただの雑多なゲームの寄せ集めにはせず、トータルのテーマに基づく、音楽で言えば「トータルアルバム」のようなサイトにしたい・・・サンタナの「キャラバンサライ」やビートルズの「サージャントペパーズ」のように・・。
5.テーマは小生の好きな・・・昭和レトロ・・・で・・・。
6.ゲームの題材は昔やったイタズラなどを素直に・・・。
7.扱いは携帯電話会社さんの公式コンテンツで行きたい。
8.単なるゲームの販売サイトにはしたくない・・・。
9.ゲームのダウンロード販売のサイトでは、お客様と縁が結べない・・・と言う感じがしました。お客様がサイトに来て、ダウンロードして、お金を払って終わり・・。もっと遊べること、楽しいこと、お客様同士の情報交換だって提供したいから・・・。
そこで、サイトの中を街に見立て、その中でお客様に小学生になって頂き、ゲーム成績の通信簿をお出ししたり、ランキングを競って頂いたり、表彰したり、仮想通貨で街の駄菓子屋で着信メロディーや待ち受け画像の買い物をして頂いたり、偶発的に起きるイベントやオリジナルのストーリーを楽しんで頂いたり。
月額でお金を頂戴し、アプリを一生懸命作りこんで、追加しながら長く楽しんで頂くことを理想にしました。
コンテンツにも手を抜かないでやりたい・・・。
真剣に作りこんで、それでもダメなものは何度でもバージョンアップする・・と考えました。ダメなものは失敗作として公開しようとか・・・。
表彰は・・・ガキ大将や良い子大賞。ゲームのうまい人だけでなく、下手な人も表彰対象です。
良い子大賞には記念に駄菓子など贈りたい。
ガキ大将は・・トップクラスの「伝説のガキ大将」にタテやトロフィーを!!でしょうか?
お客様に喜んでいただけるコンテンツをやってみたかったのです。
難しい仕事だとは分かっていました。
リスクを言い出したら、リスクだらけです。
そもそもエンタテインメントは必需ではありません。・・・前にも書いたと思いますが、そう思うのです。
「洗剤」などは基本的にお役に立つ機能があります。
しかし、ゲームなどのエンタテインメントには、そう言う「実利」機能はありません。
必需の要素は無いのです。言い換えたら、「無くても誰も困らない」のです。
実利が無いと言う事は、好きか嫌いかで選ばれると思います。
お客様がどういうものを好きか?・・・これが分かれば苦労はしないのですが・・・。
ですから、エンタテインメントは本当に難しい仕事だと思います。
実用のように理詰めにアプローチができないのです。
お客様に受け入れられる要素が実利ではなく、多分に感覚なので、理屈が立ちません。
馬鹿らしいからウケルとか、デザインが可愛かったとか・・、ましてや最近の「キモカワイイ・・」なんて、この感覚にはどうすればアプローチできるのやら??です。
ですが、やはりウケているものはコンテンツ不況と言われる現在でもウケていると思います。
私たちは名のある有名一流ゲームクリエイターでもありませんし、ビッグなタイトルも持っていません。ましてや企業規模も・・・よく言っていますように吹かなくても飛ぶ・・規模ですし、お金も、信用も無いので、メジャーなキャラクターのライセンスも取れません。
結果として弊社は名前もマス・キャラクターも無いので、他の先発コンテンツとの分かりやすい差別化要因を持っていません・・・とも言えます。差を付ける要素が無いのです。
これは普通に考えたら大ピンチ・・・ですね。
ですが、一方でお客様に笑っていただくために、自分たちも楽しみながら真剣に作って、粘り強くあきらめずに取り組むと、いつかはお客様に「面白いジャン」と伝わるのではないか・・・と言う「夢」に近い感覚を持っています。
掛けてみることにしました。本当に掛けですが・・・。
さて、そう言う決意で昨年の春から開発をしだしますと、事件は続発でした。
社内にゲームの経験者をなかなか確保できなかったり、ゲーム開発未経験ながら頑張ってくれていた担当者が体調を崩してしまったり・・・。
何とかお願いした救世主、ゲームのプロ担当者は、アプリ作り直しを進めてくれましたが、数ヵ月後、携帯のゲームをやっていては自分の技術が最新の3DのCGについて行けなくなる危機感があるから・・・と、コンソール系ゲームの開発会社に戻っていきました・・・。
実はゲームの世界ではヒエラルキーのようなものがあるようで、携帯向けのゲームは地位が低いと言いますか、ゲームのプロからするとちょっと馬鹿にされると言いますか、下に見られるような感じが・・少々あります。
コンソールはまるでフルCGの映画を再現するレベルですから、そう言う技術面の差があるのは否めませんが・・・。
小生はのんきにプラットフォームに貴賎無しというような感覚で、携帯には携帯向けの仕事をすれば良いという調子ですから、プラットフォームによって「どうこう」と言う感覚は無いのです。しかし、ゲームの世界の方からすると携帯はやはり「低い」ようです。
携帯には携帯の良さ、コンソールにはコンソールの良さ・・と簡単にはいかないんですね。
お恥ずかしい限りですが、開発は結構、困難の連続でした。
しかし、そうは言っても継続は力なりでしょうか?担当してくれた人々みんなに助けられ少しづつ企画が形になって行きました。
ゲームの作り直しも続発・・でしたが・・・。
なんと普通なら8ヶ月から10ヶ月と思われる開発に18ヶ月近くも掛かってしまいましたが、なんとかこの秋、公開に漕ぎ着けました。
2005年11月10日。auさんの公式コンテンツでスタートです。本当に嬉しかった。
サービス提供者には大手の株式会社インデックスさんになって頂きました。
弊社が企画・開発・運用・投資を担当です。
ゲームアプリのラインアップも
『炎のピンポンダッシュ』・・・玄関ベルを押して逃げるイタズラですね・・・。
『かえるばるーん』・・・空から落ちてくるカエルにストローをさしてお腹を膨らませて空に飛ばす・・・落としたらカエルに逃げられます。これもそう言うイタズラがありました。
『駄菓子やべーだー』・・・空から攻めてくる駄菓子・・・これを打ち落とすゲーム。敵のボスキャラは駄菓子屋のおばあさん。
『路地裏ぼーりんぐ』・・・路地裏でラムネのビンを倒すボーリング。邪魔者が沢山・・。
『かめすくお』・・・モナカでカメをすくうゲーム。モナカがフニャフニャにならないうちに・・・。
さらに12月8日には(年末は多数のゲーム会社さんがいっせいにエントリーをしているようで1機種のみの許可でしたが)追加もできました。
『めんこりばーし』・・・リバーシゲームをメンコの演出で遊んでいただくゲームです。
『どれでもレトロ』・・・3枚の絵合わせをしてキャラクターを消していく、連鎖を楽しむパズルゲーム。黒電話や赤いポストや豚型の蚊取り器、などの懐かしいアイテムが登場します。
フラッシュのゲームも少しづつでもレベルを上げつつ、追加していきます。
サイトのおもてなし?も一生懸命考え、夢を詰め込みました。
例えばサイトトップのイラストも、お客さんが来る時間帯で、街の風景を変えています。
朝は新聞配達と牛乳配達の人が・・。
昼間は活気のある人通り。
夕方は綺麗な夕焼けが・・・。
夜は酔っ払いのオジサンがお土産をぶら下げて千鳥足・・。
こんな細かい事が喜んで頂けるかどうか????ですが・・・。
はたして、お客様に受け入れて頂けるでしょうか・・・。