小生の一方の本業はコンサルティングです。
コンサルといっても本業がコンサルではない事業実務の出身ですから、発想から新規事業構築、新コンテンツの開発実務などをお手伝いする仕事をしております。実務をご一緒するのはコンサルじゃない??かも知れませんので・・・厳密には(新規事業)開発業務の受託でしょうか。
今回はコンテンツ開発ではなく、新規事業開発における自分なりの考え方のお話です。
お客様の会社で、よく若手の社員の方などから「こういうビジネスモデルを考えましたがどうですか?」などと問われます。こういう時によくあるケースは、自分の会社だけは儲かるが、どう考えても相手方の企業が儲からない・・・または、よほど御人好しで無いと『うん』とは言わない企画になっていることです。
特に少々経験のある、商売が分かってきかけた層・・・30歳前後くらいの方でしょうか・・・。賢い若者の企画などは、「少々相手を騙している・・・」ものまであります。
また、ほかの症状では、「お宅の言うのは分かるけど、他の会社とやるのとどう違うの?お宅じゃなくてもできるでしょ?」と言われてしまうケース・・・つまり、自分とやってくださいの「必然性が弱い」ケースを良く見かけます。
そこで感じますのは、企業を相手にする場合は、なぜか普通の対人関係では有り得ないような、片方だけが旨味のある企画や、思い込みだけの「仕掛けの甘い企画」などを考えてしまいがちだな・・・と言うことです。
小生は企業間の取引を対人関係の構図に捉えなおす様に考えてきました。
相手企業は異業種の古参企業で、重鎮だな・・・。最近の業績は横ばいだが、利益は堅調。きっと保守的な考え方だな。と言うことは「新しいことにチャレンジするより現状維持。前例重視かな」言ってみれば保守的な、しかめっ面のサラリーマンおじさんのキャラの会社だ。・・・それでもやって下さいとお願いするには本業隣接で少々の新しさ・・と感じてもらうことが必要だな・・・とか。
今回の相手はベンチャー系で業績絶好調だから、イケイケだな。こちらの存在意義や権利保護など万全でないとアイデアのみパクられるな・・・とか。レベニューのシェア概念などは理解してもらえるだろうな・・。しかしお行儀・商道徳などは無縁の若手経営者のキャラの会社かな・・とか。
対人関係で考えるようにすると、自分だけ儲かって相手が一方的に損をする話などは考えられませんから・・・。
例えば、大手企業さんに普通のコンテンツプロバイダーが、あるコンテンツ・プラットフォームでの提携を提案する場合などでは・・・、
基本的にこちらからお願いして、会っていただく時に、相手先にとって、「良い話」でないと会っていただく意味が無いですからね・・・。
ですので事業企画では、「ウチはこの旨みがありますが、貴社にもこういう良さがあります」ので、いかがですか?としたいものです。
また、お付き合いいただく「必然」もじっくり構築したいものです。弊社考案で特許出願しております。位は当然として、権利関係でもこういうライツホルダーから許諾を得ていますとか、技術面では何処と組んでますとか、事業企画の「ウチだけです」「ウチが他社と比較しても良い選択でしょう」と言う磐石性は複数の仕掛けで固めて行きたいものですね。
なぜ自分とやって頂くのか・・・他社とは違う良さ「必然性」をじっくり仕込んで事業企画を完成に近づけて行きます。
一度、こういう観点で考えて頂くと、案外面白いかもしれませんです。
本来、こういうお話はもっと事例でご紹介したいのですが、コンサル先のお客様の秘密の開示になりがちですので、具体的な例を出しにくいので大変申し訳なく思います。
特に企業に感情があると言う考え方は、うまく行かない時、もめた時の解決の糸口にもなると思っていますが・・・。いかがでしょうか?
今後、この観点のご説明のしかたを、もうちょっと考えて見ます。
それから、ひとつ思い出したのですが、さっきの「レベニュー・シェア」これは懐かしい思い出があります。
多分、携帯のコンテンツの業界に、はじめにこの概念を持ち込んだのは小生だと思います・・・。と言うのは・・・遡りますが、15年位前ですね。この概念に出会ったのは・・・。
当時、小生は会社勤めで新規事業開発の担当で、衛星放送事業の構想を作れと言われておりまして、「番供事業」(通信衛星を使い全国のケーブルテレビ局に番組を配信する通信事業・[放送ではありません])を担当しておりました。
その頃、先達の企業さんに色々教えを請うて歩いており、自社の企画の構築の参考にさせて頂いておりました。
テレ朝系のCNNを配信している会社さんに可愛がって頂いたり、本当に新しいことばかりですが、頑張って勉強しておりました。で、レベニュー・シェアです。売り上げ金からの分配です。
これは老舗のハリウッド映画の衛星放送会社さんの放映権の支払い方式で、当時は感動する程の賢いモデルだ・・と驚いた考え方でした。放映権の処理をしている米国式の方法なんでしょう・・・こちらの業界の方にとっては珍しくも無いかもしれません。
放映権料は事前に支払うのではなく、その月の自社のお客様の売り上げの総額に、一定の割合を乗じて算出した金額を後清算する方式なのです。で、その計算したロイヤリティの総額を、その月にオンエアしたすべての作品の視聴率の多寡に応じてハリウッドの会社別に分配する方式でした。
この計算基礎となる視聴率は、すべてのケーブルテレビ局の積算ではなく、データサンプルとして採用している幾つかのケーブル局の中で、どの作品の視聴率がどうだったかを拾って、その割合を全国に当てはめて計算していました。
この方式、何が頭がいいって、支払いロイヤリティの売り上げに対する比率が一定割合で固定されている・・・とも言えるわけですから、原価の思わぬ変動などが無く、経営が安定します。また、支払いの原資料たる視聴比率は、まったくのガラス張りで、作品ごとに幾ら分配するかが大きく変動しても、自分の支払い総額(コスト)には変動が無いのである意味で、「気楽に・客観的に」払えるわけです・・・。
そもそも、この条件でハリウッドと契約できていることが「凄い交渉力」なので、誰にでもできるネゴシエイションではないし、大変な実力の会社さんなんだな・・・と考えたものですが、とても勉強になりました。
月日は流れ、小生も担当していたアニメ番組の配信事業から異動で離れ、また別の開発を担当しておりましたが、心の中で、いつか別の事業でも、レベニューシェアの発想で真のパートナーシップを築きたいものだ・・・と理想に思っておりました。
で、携帯コンテンツの開発の時、投資を応分に負担して、その分を売り上げからシェアする方法を提案したのでした。
この方法ですと、そのコンテンツ事業に対して発注先さまも真剣にならざるを得ません。売れるかどうかが直接、彼らの収益に連動します。言い換えると末端売り上げが即、回収可能かどうかに関わってきますので・・・。
納品したら終わり・・の単なる発注・受注の関係を超えて、本当にパートナーとして何とかうまく事業をやる関係・・にならざるを得ないですから・・・。
狙ったのは、「ハイ。納品して終わりー」ではなく、リスクをお互いにとることで、相手先さんのノウハウや考え方を真剣にぶつけて頂き、本物のシナジーを出すことだったのです・・・。
残念なのは、後日、世間ではこの方式が誤解され、下請けさんへの取引上の圧迫に変質してしまったことです。
レベニューのシェアの算出では企画の貢献度、開発資金提供の貢献度、開発実務の貢献度などを総合的に妥当に算定することが最重要で、場合によっては外注先さんのほうが取り分が多くなる場合もあるのですが、実際には交渉のツールになってしまい、開発費は払わないから売り上げの10%でやれ・・・にしてしまった会社さんが多いと聞きます・・・。
やはり企業は思想ですね・・・。
側を真似ても中身が「別」になっちゃいますから・・・。
後日談ですが、2年位前、ある開発会社の若手の優秀な営業担当者から言われた言葉があります。
「レベニューシェアなんて方式、初めてやった奴は本当に悪人ですよ。殺してやりたいくらいです」。
小生「それは、おそらく俺です・・・」と答えました。
一同「エーッ!!」、そして「シーン・・・」。
その後、本当はこういう思想だったのが、業界で変質して適用されてしまった話や、彼が受託した話の中での「ひどい事例」などで大変盛り上がり楽しいひと時??を・・・過ごしました。
こう言うのが「仏作って魂入れず・・・・」でしょうかね・・・。
「レベニュー・シェア」という言葉には、やや無念さ?を感じます。